経費をいくら計上するかによって所得が変わります。所得が変われば当然、将来払う税金の金額も変わってきます。
税務署から問い合わせが来ても相手を納得させられる理由があるなら、経費はどんどん計上しましょう。
目次
一度使った勘定科目はルール化しておく
会計ルールのひとつに「継続性の原則」があります。簡単に言うと、一度決めた勘定科目は継続的に使い、むやみに変更することを禁止するものです。勘定科目をころころ変えることは利益操作にもつながり、財務諸表での比較を困難にさせます。正当な理由があれば変更できますが、基本的には同じルールで仕訳しましょう。
たまにしか使わない勘定科目だと忘れやすいので、私は「事務用品費」で仕訳したもの、「新聞図書費」で仕訳したもの、といった風に箇条書きでまとめています。
こちらは一度使い出したら手放せないノートです。にじみや裏抜けがしにくく、書き心地に徹底的にこだわった国産の中紙を使っているため、万年筆の方にもおすすめ。
経費で落とすときの勘定科目
これらは一例です。よっぽと的外れでないかぎり、好きな勘定科目を使って構いません。問題なのは、経費として認められないものを経費に計上することです。
勘定科目は新たに作れます。たとえば、事務用品は消耗品費ですが、金額が多いようなら「事務用品費」を作ってもよいでしょう。勘定科目を分散させることは、何に使ったのかを把握しやすく、税務署のチェックが入る可能性も低くなります。
サイト運営にかかわる費用
通信費にまとめてもよいのですが、あえてインターネット関連費という科目を作って仕訳するのも手です。
項目 | 勘定科目 |
プロバイダー使用料 | 「通信費」or「インターネット関連費」 |
レンタルサーバー使用料 | |
独自ドメイン使用料 | 「支払手数料」or「通信費」or「インターネット関連費」 |
WordPressの有料テーマ | 「広告宣伝費」or「インターネット関連費」 |
PC関連のソフト
一般的には消耗品費です。クラウド型会計ソフトやウイルスバスター更新料なども同様ですが、通信費や修繕費や支払手数料とする方法もあります。
項目 | 勘定科目 |
セキュリティーソフト | 「消耗品費」or「事務用品費」 |
ウイルスバスターなどの更新料 | 「消耗品費」or「事務用品費」or「修繕費」or「支払手数料」 |
会計ソフト | 「消耗品費」or「事務用品費」 |
会計ソフト(クラウド型) | 「消耗品費」or「通信費」or「支払手数料」 |
入力補助ソフト | 「消耗品費」or「事務用品費」 |
一太郎やOffice |
文房具や備品
10万円以下であれば、一般的に消耗品費で処理します。事務用品は事務用品費でもOKです。パソコンを購入したときはキーボードとマウスも含め、総額で10万円以上かを判断します。
(10万円以下の場合)
項目 | 勘定科目 |
文房具 | 「消耗品費」or「事務用品費」 |
プリンター用インク | |
コピー用紙 | |
パソコン | 「消耗品費」 |
ペンタブレット | |
キーボードやマウス | |
シュレッダー | |
回転椅子 | |
デスク |
(10万円以上の場合)
10万円以上の場合は原則、減価償却資産となります。法定耐用年数で割った金額を、毎年按分して計上します。
取得価額が10万円以上20万円未満であれば、3年間で均等に減価償却できる「一括償却資産」でも仕訳できます。30万円未満で、かつ青色申告者で条件を満たしていれば、購入した年に全額経費にできる「少額減価償却資産の特例」も認められます。
取引先の打ち合わせ・取材など
接待にかかわる費用は「接待交際費」、社内外の打ち合わせに付随する飲食代は「会議費」、従業員への慰労のためのお茶菓子代は「福利厚生費」です。ひとりだけで事業をやっている場合、福利厚生費は発生しません。
会議費や接待交際費については「カフェでの打ち合わせは会議費になる?レシートに証拠を残しておこう」の記事でくわしく解説しています。
項目 | 勘定科目 |
打ち合わせでの飲食代(割り勘) | 「会議費」 |
打ち合わせでの飲食代(相手方の代金も負担) | 「会議費」or「接待交際費」 |
クライアントとのミーティングによる喫茶店代 | 「会議費」 |
取引先への手土産(贈答) | 「接待交際費」 |
取引先とのお酒を含む飲食代 | |
貸し会議室のレンタル料、会議でのお茶代 | 「会議費」 |
飲食系ブログ執筆のための飲食代 | 「取材費」 |
インタビュー記事執筆のための会食費 | |
出版やメディア掲載の取材旅費・宿泊代・入館料 |
事業主ひとりでの外食費
事業主の飲食代は家事費として扱われるため、経費に計上できません。例外として、集中して作業できる環境を整えるためのお茶代程度の金額なら計上できます。
頻繁に計上して金額が多くなると、「これはなに?」と勘ぐられるかもしれませんので、ほどほどがベストでしょう。レシートの四隅に「作業時間、何の作業していたのか」もメモしておきます。
項目 | 勘定科目 |
クライアントとの待ち時間にカフェで執筆 | 「会議費」 |
集中して作業するために喫茶店で資料作成 | |
出張中に立ち寄ったお店で、これから会う取引先の見積書作成 |
雑誌や書籍など
業務に必要なものであれば、新聞図書費で計上します。
項目 | 勘定科目 |
実務書などの書籍 | 「新聞図書費」 |
国語辞書などの辞典類 | |
雑誌 |
水道光熱費や家賃
自宅を事務所として使っている場合、家事按分した電気代と家賃が計上できます。ただし、自宅兼事務所の場合、水道代とガス代は一般的に経費として認められないようです。
我が家は契約者と支払者が夫のため、家賃は計上していません。しかし固定資産税や修繕費などの経費であれば、生計が同一の親族が支払ったものであれば事業者の経費にできます。詳しくは「もう迷わない!家事按分の面積の出し方と『地代家賃の内訳』の書き方」の記事をどうぞ。
項目 | 勘定科目 |
電気代 | 「水道光熱費」 |
家賃 | 「地代家賃」 |
インターネット代 | 「通信費」 |
事業に関係する資格取得
売上に貢献するか、事業に本当に必要なスキルなのか、といった点が経費に含められるかの分岐点になります。金額があまりに高いと認められない可能性もあります。
項目 | 勘定科目 |
参考書や問題集の購入 | 「新聞図書費」or「消耗品費」 |
受検料や講習代 | 「研修費」or「雑費」 |
受検地までの交通費 | 「旅費交通費」 |
根拠は所得税基本通達(37-24)にも書かれていますが、「青色申告の決算の手引き」に研修費用について以下の記述があります。
研修費用など
事業主や家族従業員、使用人がその事業に直接必要な知識や技能を習得するための研修などを受け、それに要した費用を事業主が支出した場合には、その習得のために通常必要と認められる金額が必要経費になります。
出典:国税庁「平成28年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」
雑費の使いすぎに注意
該当するものがないときに使う勘定科目が「雑費」です。しかしながら雑費を多用した結果、他の勘定科目よりも金額が大きくなるのは避けた方がよいでしょう。
なぜなら、アンバランスな決算書は税務調査で引っかかる可能性が高く、何より「雑費の中身はなんだろう?」と疑問を持たれやすいからです。使用頻度が高い・金額が大きいものは、勘定科目を別に作ることも検討してはいかがでしょうか。
仕訳で参考にした本
どこまで経費で落とせるのか、経費で落とすなら勘定科目は何で落とせばいいのか、結構悩みますよね。
こちらの本は、プライベート用のクレジットカードで支払ったときの仕訳など、経理の知識がなくても事例別にまとめてあるので、重宝しています。個人事業主にありがちな仕訳も多く、本当にお世話になっています。